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鈴木敏泰(准教授)(2ページ) 分子研リポート2015 | 分子科学研究所

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研究領域の現状 279

鈴 木 敏 泰(准教授) (1 9 9 8 年 1 月 1 日着任)

A-1) 専門領域:有機合成化学

A-2) 研究課題:

a) 曲面グラフェン分子の開発(芳香族ベルト・サドル) b) 電界効果トランジスタのための有機半導体の開発

A-3) 研究活動の概略と主な成果

a) フラーレン類やカーボンナノチューブの芳香族性は未だよく理解されておらず,理論家の間でも議論の対象となって いる。実験的には,NMR の遮蔽効果が環電流の合計としての情報を与える。C60の場合,He や Xe 原子,水素や水

分子を中心に置いた内包フラーレンが知られており,それらのNMR が溶液中で測定されている。例えば,H2@C601H NMR では,–1.44 ppm にシングレットが観測されているが,これは溶液中の水素分子と比較して 5.98 ppm も 高磁場シフトしている。[n] シクロパラフェニレン(CPP)はナノフープと呼ばれ,アームチェアー型カーボンナノチュー ブの最小モデルであり,C60には[5]CPP の構造が含まれている。CPP の環中心における遮蔽効果は,CPP の芳香族 性を判断するよい指標となりうる。フラーレンと異なり,CPP 環内に原子や小さな分子をとどめておくことは困難で

ある。そのため,環中心近くに共有結合によってつながれたグループをもつ誘導体を設計する必要がある。この目的 のために,[8]CPP の誘導体である3種のテトラシクロ(2,7- カルバゾール)合成した。一つの化合物は,隣り合った

アンチ型カルバゾールの間に5,5- ジメチルノナンが架橋されており,共有結合によりつながれたメタンプローブとし て利用することができる。環中心近くに固定されたメチル基は,ローカル環電流によって強く遮蔽されており,1H NMR で –2.70 ppm にシングレットを示した。次に DFT の NMR 計算によって得られた nucleus-independent chemical shift(NICS)値を用い,ローカル環電流とナノフープ全体を巡るグローバル環電流をそれぞれ可視化した。ローカ

ル環電流によりナノフープ環内は完全にジアトロピックとなり,パラトロピック領域は環外のみに存在する。また,[5] CPP から [7]CPP ではパラトロピックのグローバル環電流が生じ,[8]CPP 以上ではほとんど発生しないことが分かっ

た(論文投稿中)。

B-1) 学術論文

F. ANGER, H. GLOWATZKI, A. FRANCO-CAÑELLAS, C. BÜRKER, A. GERLACH, R. SCHOLZ, Y. SAKAMOTO, T. SUZUKI, N. KOCH and F. SCHREIBER, “Interface Dipole and Growth Mode of Partially and Fully Fluorinated Rubrene on Au(111) and Ag(111),” J. Phys. Chem. C 119, 6769–6776 (2015).

B-10) 競争的資金

科研費若手研究(B), 「チューブ状多環芳香族炭化水素の合成」, 阪元洋一 (2006年 –2007年).

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280 研究領域の現状 C) 研究活動の課題と展望

京大化研・山子教授を代表者とするCREST「超分子化学的アプローチによる環状π 共役分子の創製とその機能」に共同研

究者として参加している(2016年3月まで)。有機EL や有機トランジスタの材料開発における経験を生かしていきたい。こ れまで,有機デバイスに使われているπ 共役分子は直鎖型のものである。これが環化することによって,どのような固体構 造を取るのか興味深い。アモルファスになるのか,結晶になるのか,それとも分子構造により自由に制御できるのか,その点 を見極めていきたい。我々はここ数年,短いカーボンナノチューブである芳香族ベルトの有機合成に取り組んでいる。これは, 今回のCREST のテーマとも合致するので,今後ともその完成を目指していきたいと思う。

参照

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